プルースト効果とは?仕組みや香りの活用方法まで紹介!

プルースト効果とは?仕組みや香りの活用方法まで紹介!

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プルースト効果とは特定の香りが、ある一定の事象や記憶と結びつく現象を表す言葉です。ふとした瞬間に懐かしい香りを覚えたことで、学生時代のことを思い出す。特定の香りをかいだ瞬間、特定の人を思い出すなど。

香りによって忘れていた記憶を思い出したという経験を持つ方もおられるでしょう。しかし、なぜ香りをかいだだけで古い記憶を思い出すことができるのでしょうか?そこで本記事では、香りと記憶の関係、プルースト効果を活用する方法など詳しく解説していきます。

プルースト効果について
  • 香りによって一定の記憶を思い出す、香りと共に記憶に深く刻み込まれる現象
  • フランスの作家「マルセル・プルースト」が元
  • 恋愛・空間機能性・マーケティングへの活用が期待できる

プルースト効果とは

特定の香りをかいだ瞬間、普段は思い出さない記憶を揺り動かされる現象を「プルースト効果」と呼びます。大なり小なり似たような経験をしたことがある方は多いと感じますが、実際のところ何故、香りと記憶が結びつくのかまではご存知である方は少ないでしょう。まずはプルースト効果の定義や由来について解説します。

プルースト効果の由来

プルースト効果そのものは古くから存在する現象ですが、「プルースト効果」と名付けられたのは20世紀に入ってからです。フランスの作家「マルセル・プルースト」の著書「失われた時を求めて」の作中で、マドレーヌを紅茶に浸した際の匂いから幼少の記憶を思い出す一節があります。

この表現を用いたことで香りから一定の記憶や情景を思い出す現象を、作家の名前にちなんで「プルースト効果」と呼ばれるようになったといわれています。

プルースト効果の定義

プルースト効果とされるものは、基本的に特定の香りで記憶や当時の感情を思い出すことです。香り以外がきっかけになった場合はプルースト効果とはされません。

プルースト効果は香りによって古い記憶を呼び覚ますことですが、当時の感情や情景を一緒に思い出すとされる点が大きな特徴でしょう。知人や出来事を思い出すだけではなく、当時の感情を伴う(※1)ことで、強いノスタルジーを覚えやすいのです。

プルースト効果の仕組み

実際に香りは記憶を刺激したり、特定の記憶を思い出させたりするものだと分かりました。では、プルースト効果が起こる仕組みはどのようになっているのでしょうか。ここからはプルースト効果の仕組み、嗅覚と脳の関係性など解説します。

五感中、香りだけが大脳辺縁系を直接刺激する

五感の中で香りを感じるのは「嗅覚」と呼ばれるもの。外界から鼻腔に入ってきた香り成分が、嗅上皮にある感覚細胞に付着し、電気信号に変換されて脳へ届きます。この際、香り成分はほかの五感とは異なり、大脳辺縁系を直接刺激すると解明されています。

大脳辺縁系とは脳の内部側面にあり、発生学的に「古い脳」です。脳の物質的な仕組みはお饅頭のようなものだ。という例えを聞いたことはないでしょうか。一番古い脳が「あんこ」であり、進化の過程で皮やコーティング部分が足されるように肥大化していきます。

上記の例でいうと大脳辺縁系はあんこのすぐ上にある皮部分。主な役割は本能や自律神経、記憶や情動など、言い換えれば生き物が生きていく上で、より本質的な部分を司る部位といえるでしょう。嗅覚は、そんな大脳辺縁系を直接刺激する感覚なので、記憶や情動と結びつきやすいと考えられます。

香りが記憶を思い出させる

大脳辺縁系には「海馬」と呼ばれる、記憶を司る部位が存在し、特定の香りをかぐことで海馬部分が活性化するという実験結果も報告されています。

意識的に懐かしいと感じる香りを選出、実際に香りをかいでいる際の脳波を測定したところ、海馬部分の活性によって香りと記憶の交互作用が認められ(※2)ました。ただし海馬単独で反応したわけではないこと、また嗅覚に限らず脳はまだまだ分からない部分が多い分野の一つです。

これからの研究でより深く、明確な仕組みが解明されるかもしれません。

プルースト効果や香りの活用方法を紹介

プルースト効果とは気のせいや偶然ではなく、仕組みも解明されつつある生理現象(生理作用)の一つだと分かっていただけたのではないでしょうか。ここからは、そんなプルースト現象の活用方法について確認していきましょう。

1.恋愛への活用

最初に紹介するのは、プルースト効果を恋愛に活用する方法です。男女を問わず、愛しい人へ自分を印象付けたいと考えるのは当然のことでしょう。恋愛に効く香りとしておすすめになるのは以下の通り。

恋愛への活用に
  • ムスク
  • イランイラン
  • シトラス

甘く華やかなムスクやイランイランは恋愛にピッタリの香り。ムスクは石鹸のようなパウダリーな香りも持つので、男女を問わず高い人気を誇ります。またイランイランは催淫効果もあるとされる華やかな香り。シトラス系は万人受けしやすい香りなので、相手の香りの好みがわからないときでも使いやすい点が大きな特徴です。

相手が好む香りの香水で印象を残す

プルースト効果を恋愛に利用する方法はごく単純です。意中の人に合う際に、必ず相手が好む香水をつけておくようにするだけ。好ましい香りと一緒に自身を印象付けるだけで、香りの好ましさ=自分への印象アップにつながるのです。

したがって、選ぶ香りはしっかりと吟味する必要があります。プルースト効果はよい思い出としてだけではなく、悪い方向にも働きます。相手が不快だと思う香りを纏っていた場合、マイナスの印象がそのままあなたの印象になりかねません。あくまでも相手にとって好ましい香りを探すことが重要です。

プレゼントに香りを付けて思い出してもらう

すでに付き合っている場合など、相手との親密度を高めるためにプルースト効果を活用することも可能です。相手へのプレゼントに、自身がよく使う香水などの香りを付けてプレゼントしましょう。ふとした瞬間に香りで自身のことを思い出してもらえるのです。

人は1度だけ会った人よりも、接触を複数回にわたって持った人の方に好意や興味を持ちやすいとされています(単純接触)。プルースト効果と共に、自分を思い出してもらうことで、間接的な単純接触効果を得ることも期待できるでしょう。

頻繁に会うことができない遠距離恋愛などでおすすめの方法です。

空間に機能性を持たせる活用

続いてのプルースト効果の活用方法は、空間自体に機能性を持たせる活用方法です。こちらはプルースト効果そのものと一緒に、香りの効果を活用する方法でもあるので、そのときの状況に応じて使い分けてみてください。

空間を機能的に
  • レモン
  • スウィートオレンジ
  • ラベンダー
  • ペパーミントなど

空間に機能性を持たせたいなら、上記の香りが特におすすめになります。

集中力をUPさせる活用

プルースト効果とは別に、香りそのものが自律神経などに働きかけることで、何らかの効果を得られるのではと考えられています。集中力アップの効果が得られるとされる香りもあり、視線移動の回数によって集中力アップの効果を図った実験(※3)もあります。集中力アップの効果が得られる香りとされているのは以下の通りです。

集中力のUPに
  • レモン
  • ペパーミント
  • ローズマリー

どれも爽快感を覚える香りとして、フレグランスによく使われている香りなので手に入れやすいのではないでしょうか。特にレモン、ペパーミントは集中力向上効果が高いとされています。また記憶力向上の方法として、暗記したい項目と香りを結び付ける方法も有用でしょう。

リラックス&ストレス解消への活用

香りの効果の中でも有名なものが、リラックス&ストレス解消効果。香りにあまり興味がない人でも、ラベンダーの香りでリラックス~などというフレーズを一度は見たことがあるでしょう。実際のところたくさんの実験、研究によって香りによるリラックス効果はほぼ実証されているといえます。

リラックス&ストレス解消に効果ありとされる代表的な香りは以下の通り。

リラックスしたい時に
  • ラベンダー
  • スウィートオレンジ
  • レモン
  • ネロリ

ラベンダーやスウィートオレンジは、不眠解消にも効果ありとされています。近頃疲れが取れないと感じているときにぜひ活用してみてください。

またプルースト効果を用いて、リラックス&ストレス解消を叶える方法もあります。それは自分が安心できる場所・人の記憶と結びついた香りを探すことです。幼いころに過ごした実家を象徴する香り、おばあちゃんの家で焚かれていた線香の香り、甘えられる人がつけていた香水など、思いつくものがあれば試してみるとよいでしょう。

マーケティングへの活用

プルースト効果は個人的に用いるほかにも、マーケティングなどビジネスの世界でも活用できます。香りを効果的に使うことで、ブランディングの周知、売り上げアップも夢ではありません。ここからはプルースト効果について、もう一歩踏み込んで確認していきましょう。

おすすめの香りは以下の通りです。

マーケティングへの活用へ
  • シトラス系
  • フローラル系
  • ウッディ系

好みが別れにくい香り、またターゲットの性別や年齢によって香りを慎重に吟味することが重要です。

ブランディングへの活用

従来のブランディングにおいて活用されてきたものは、主に「視覚」と「聴覚」です。広告やテレビCMなどによってターゲットへアピールしてきた方法ですね。しかしプルースト効果を使えば、よりターゲットへブランドを印象付けることが可能になります。

特定の香り=ブランドの香りと認識してもらうことで、ブランドと関係ない場所でも香りだけでブランドを思い出してもらうこともできます。

恋愛の項でも触れましたが、人は接触回数が多いものほど興味や親しみを持つ生き物です。商品やサービス、店舗の空間やDMに特定の香りを用いることで、ブランドを印象付けることができるでしょう。

滞在時間アップ(売り上げアップ)への活用

JR東日本企画が運営する「jeki駅消費研究センター」が行なった「駅ビル回遊行動調査」※では、「購買意欲があり滞在時間が短い」人より、「購買意欲がなく滞在時間が長い」人の方が購入率や購入金額が高いという結果となり、来店時の購買意欲以上に、滞在時間の長さが売上を左右していることが明らかになりました。

そんな重要な「滞在時間の長さ」に、高い効果を発揮するのが「香り」です。人がついつい長居してしまう理由には、「これを買う」などの明確な目的がある以外にも、「楽しい」や「居心地がいい」などがあります。

実際に、アメリカのアラン・ハーシュ博士(嗅覚味覚療法研究財団)が行なった「匂いでどれだけ滞留時間に差が生まれるか」について調べた実験では、いい香りの店舗の方がお客様の滞在時間が長くなり、売上も50%以上UPするという結果になりました。

不快な香りがする場所に長くいたいと思う人は少ないでしょう。反してよい香りがする場所であれば、滞在時間が延び、売り上げにもつながることが実証されているのです。また香りによって心地よい体験をした、という記憶によって再来してもらえる可能性を高めることにもつながります。

日常や仕事に香りを取り入れる4つの方法

プルースト効果の活用、香りの意外なほどの効果を知った後は、実際に香りをどう取り入れていくのかについて見ていきましょう。日常的な取り入れ方から、マーケティングや仕事で用いる際のおすすめの方法までご紹介します。

1.香水を付ける

個人で日常的に香りを取り入れるもっとも簡単な方法としておすすめなのが、好きな香りの香水を付ける方法です。シュっと一吹きするだけで手軽に香りをまとえるので、ボトルを持ち歩いていればいつでも香りを楽しむことができます。

ただし、香水に限らず香りは徐々に慣れてしまう点に注意が必要です。どれだけよい香りであっても、付けすぎてしまうと周りの人にとっては香害になりかねません。一昔前までは首筋や手首に付けるのがよしとされてきましたが、昨今では足首や腰回りに軽く一吹きする方法が上品な付け方とされています。

お気に入りの香り、意中の人の好みの香りをまとって日常から香りを楽しんでください。

香り付きの化粧品・コスメを使用する

香水の香りは強すぎると感じる場合は、ほのかに香る香り付きの化粧品やコスメの使用がおすすめです。香水より香り方がソフトなので、ほのかな香りを楽しめるでしょう。

コスメの他にも、ボディクリームやハンドクリーム、シャンプーのフレグランスを好みの香りにする方法でも楽しめます。香水ほど強く香らせたくない、種類が多くて選べない場合の入門編として、より身近なコスメから試してみてください。

アロマテラピーを利用する

香りを身にまとうのではなく、空間に香らせたい、香りの効果をより実感したいと考えるのならおすすめはアロマテラピーの活用です。精油、アロマオイルと呼ばれる植物から抽出されたオイルを使って、香りを楽しむ方法です。

オイルを用いて香りを楽しむ本格的な方法から、スプレータイプやキャンドルタイプなど選べる幅も広い点が魅力的。アロマオイルの種類によって、得られる効果も異なるので、そのときの状況や気分に合った香りを楽しめます。

アロマディフューザーを使用する

アロマテラピーの中でも、アロマオイルを使って空間に香りを拡散させたいときはアロマディフューザーを利用するとよいでしょう。香りの濃度調整、香らせたい時間帯などの設定をディフューザーにお任せできるので、難しいことを考えることなく香りを堪能できます。

手のひらサイズの小さなものから、店舗やオフィスの空間全体に香りを拡散できる業務用まで、ディフューザーの種類が多い点もメリットの一つです。店舗のブランディング、オフィスでの仕事に集中しやすくさせるなど、香りの効果を実感しやすい活用法でもあります。

日常的な利用法から、マーケティングとしての香りの活用まで幅広く利用できるでしょう。

プルースト効果の限界と課題

極個人的な恋愛から、ビジネスに関するマーケティングまで、様々な点でプルースト効果(嗅覚)が重要な感覚だということが分かってきています。しかし、プルースト効果の仕組みや効果がすべて解明されているわけではありません。

ある研究(※4)では、嗅覚における記憶想起の実験そのものに対して「無意識のまま」思い出した記憶なのか、または、実験であることを自覚しているからこそ「思い出そうとして」想起された記憶なのかをしっかり確認する必要があるとしています。

研究としては、匂いには無意識のまま記憶を思い出すことも多いと結果が出ましたが、嗅覚イメージ能力が高い人ほど鮮明に思い出す傾向が強いとされています。これは反対に考えれば、嗅覚イメージが低い人の場合は、プルースト効果はあまり期待できないとも考えられるでしょう。

プルースト効果をマーケティングに用いようと考えるのであれば、嗅覚イメージが低い人にも刺さる香りを吟味する必要があります。強烈に情動に働きかけられるプルースト効果であるからこそ、より深い研究による記憶との結びつきの解明や慎重な香りへのアプローチが重要になるといえるのです。

まとめ

今回は香りが記憶を刺激するとされる「プルースト効果」について紹介してきました。説明されてみれば、同じような経験をしたことがある…!と思い至った方も多いのではないでしょうか。

  • プルースト効果とは、特定の香りをかぐことで古い、または忘れていた記憶を鮮明に思いだす現象を指す
  • プルースト効果が表れる仕組みは、嗅覚がダイレクトに大脳辺縁系を刺激するから
  • プルースト効果は恋愛、空間の機能性を高める、ビジネスの世界でも活用できる

中でも上記のことについて詳しく触れてきました。「ノスタルジック」な感情を強烈に揺さぶるプルースト効果は、昨今ビジネスの世界でも非常に重要視されている要素の一つです。しかし、嗅覚という極個人的な器官を頼りにすることから、一定の効果を得るには慎重な取捨選択が必要となるでしょう。

特に好き嫌いという好みも重要になるとなれば、どんな香りを選べばよいのかと迷ってしまいケースも多いと感じます。迷いの解消ができないときには香りのプロフェッショナルが揃っている弊社にぜひご相談ください。多くの方に刺さる香りの選定はもちろん、効率的に空間に香りを広げるためのノウハウまで丁寧にご説明いたします。

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