
メンテナンスの手間が少なく、ランニングコストも抑えられる脱臭・除菌技術として「光触媒」が再注目されています。しかし、万能な技術ではないため、導入環境を間違えると「効果がない」という結果になりかねません。
本記事では、光触媒のメカニズムを図解で分かりやすく解説するとともに、「オゾン」や「酸素クラスター」など他の主要技術との性能・コスト比較表を公開。
貴社の環境において、光触媒が最適な脱臭装置なのか?それとも他の選択肢がベストなのか?失敗しない装置選びの判断基準をお届けします。
光触媒とは?
光触媒とは、光が当たることで化学反応を引き起こし、周囲の有機物を分解する物質です。主に光照射下で作用します。
3.1 光触媒
光照射下で、参加・還元作用によって、空気の浄化、脱臭、水質浄化、抗菌、抗かび、抗ウイルス、セルフクリーニングなどの諸機能を発現する物質。機能性のファインセラミックスの一種。
JIS R1701-1 ファインセラミックス-光触媒材料の空気浄化性能試験方法 より
代表的な材料として広く利用されているのが酸化チタン(TiO₂)で、1972年に藤嶋昭博士らが発表した光電気化学反応に関する研究を起点に、現在まで数多くの論文・研究成果が蓄積されています。
光触媒の3つの特徴
- 光(主に紫外線)を受けることで反応が起こる
- 触媒自身は反応の前後でほとんど消耗しない
- 臭気・菌・ウイルスの原因となる有機物を分解する
単に臭いを覆い隠したり、一時的に抑え込んだりするのではなく、原因分子そのものを別の物質へ変化させる点が特徴です。
光触媒の仕組みと図解を解説

光触媒の作用は、大きく分けて① 親水性化作用 と ② 分解反応 の2つに分類されます。
① 親水性化の仕組み
光触媒の表面に光が当たると、表面は超親水性と呼ばれる状態に変化します。これは、水分子が非常になじみやすくなり、水が玉状にならず膜のように広がる状態です。
親水性化による主な効果
- 汚れが表面に付着しにくくなる
- 付着した汚れも水と一緒に流れ落ちやすくなる
- 触媒表面が汚れにくく、性能が低下しにくい
光照射 → 表面が超親水性 → 水膜形成 → 汚れ除去
親水性化は、直接的に臭気を除去する仕組みではありません。しかし、光触媒の表面を清浄な状態に保ち、性能を長期間安定して発揮させるための重要な要素です。
装置の「保守性」や「性能の持続性」が重視されるため、この特性は大きなメリットと言えます。
② 分解の仕組み

光触媒による脱臭・除菌の本質は、分解反応にあります。
分解の流れ
- 光が光触媒に当たる
- 触媒内部で電子(e⁻)と正孔(h⁺)が生成される
- 表面で活性酸素種(・OH、O₂⁻ など)が発生する
- 有機物や臭気分子が酸化分解される
- 最終的に、有機物は 二酸化炭素(CO₂)と水(H₂O) に分解されます

光触媒は、強い臭気を瞬時に除去する即効型の技術ではありません。その代わり、「時間をかけて原因物質そのものを減らしていく持続型の技術」であり、連続運転や常時対策に適しています。
光触媒脱臭装置と他除菌・脱臭装置の効果比較
| 項目 | 光触媒 | 酸素クラスター イオン |
空気清浄機 (フィルタ方式) |
UV-C | 次亜塩素酸水 | オゾン |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 付着菌・付着ウイルス | × | ○ | × | △ (照射部のみ) |
○ | ○ |
| 浮遊菌・浮遊ウイルス | △ (照射部のみ) |
○ | ○ | △ (照射部のみ) |
× (空間噴霧NG) |
○ |
| 安全性 | ○ | ○ | ○ | × | × | × (低濃度△) |
| 消費電力 | 30〜150W | 11〜21W | 15〜100W | 25〜150W | 10〜25W | 15〜100W程度 |
| 備考 | フィルタ汚染注意 | ― | フィルタ目詰まり注意 | 人・内装材への影響注意 | 人体への影響注意 | 空間濃度に注意 |
方式ごとに「作用する対象」と「安全性」が大きく異なります。
利用用途の似ている「おすすめの3大技術」
- ・光触媒脱臭装置
コスト重視、小規模空間、メンテナンスフリー、守りの対策(基盤維持) - ・酸素クラスター
性能重視、中〜大規模空間、隅々まで届く、攻めの対策(積極除去) - ・フィルタ式(一般的な空気清浄機)
ホコリ・花粉除去、集塵メイン、定期交換必須、待ちの対策
その他の技術
- オゾン脱臭機
超強力脱臭、無人環境限定(夜間など)、要濃度管理、短時間集中ケア - UV-C(深紫外線)
表面・通過菌除菌、照射範囲限定、即効性あり、直視厳禁(人体への影響注意) - 次亜塩素酸水
部分的な除菌、水回り・汚物処理室向け、薬剤補充が必須、湿気対策が必要
「酸素クラスター」は、イオン自体が空間へ飛び出していく能動的な技術で、安全性が高く「部屋全体の空気(除菌・脱臭)をより確実にケアしたい」場合は、酸素クラスターの方が有利なケースがあります。
光触媒脱臭装置と他装置の費用比較
| 技術 | 初期価格 | 消費電力 | メンテナンス性 |
|---|---|---|---|
| 光触媒式 | 中 | 低〜中 | ◎ |
| 酸素クラスター | 中〜高 | 低〜中 | ◎ |
| フィルタ式 | 低〜中 | 中 | △ |
| UV-C | 中 | 中 | △ |
| 次亜塩素 | 低 | 低 | △ |
| オゾン | 中 | 中 | △ |
光触媒脱臭装置は、初期費用だけを見ると突出して安価ではありませんが、薬品交換や頻繁な部材交換が不要なため、長期運用ではコストが安定しやすい傾向があります。
「管理工数」や「薬品管理」も重要なコスト要素となるため、運用負担の小ささは大きな評価ポイントです。
光触媒脱臭装置のおすすめ施設・工場
✅ おすすめの施設・工場
- 事務所・休憩室
- 医療・介護施設
- 保育園・学校(教育機関)
これらの施設に共通するのは、臭気や菌が常に少しずつ発生し続ける環境である点です。強烈な脱臭性能よりも、安全性や継続性、管理のしやすさが重視されます。
❌ おすすめしない施設・工場
- 商業施設
- オフィスや大規模待合室、劇場
- 工場や倉庫など特殊な臭気が充満する場所
光触媒脱臭装置は分解速度に限界があるため、中程度の臭気を短時間で処理する用途には不向きです。
広いホールや人の出入りが激しい商業施設では、光触媒脱臭装置の分解スピードが追いつかないことがあります。
オゾンは強力ですが、有人環境では使いにくいのが難点です。そこで選ばれているのが「酸素クラスター」です。
酸素クラスターは、光触媒脱臭装置と同等の「高い安全性(有人使用OK)」を持ちながら、オゾンのような「空間全体への拡散力」を兼ね備えています。
光触媒脱臭装置のメリット&デメリット

✅ メリット
- 分解型で再発しにくい
- 薬品が不要
- 安全性が高い
- 長期運用に向く
これらの施設に共通するのは、臭気や菌が常に少しずつ発生し続ける環境である点です。強烈な脱臭性能よりも、安全性や継続性、管理のしやすさが重視されます。
❌ デメリット
- 光条件に左右される
- 吸い込んだ空気しか濾過されない
- 触媒の表面が汚れると効果が弱まる
これらの施設に共通するのは、臭気や菌が常に少しずつ発生し続ける環境である点です。強烈な脱臭性能よりも、安全性や継続性、管理のしやすさが重視されます。
光触媒は「安全性」に優れる一方で、「即効性」や「対応範囲」には限界があります。
用途を誤ると期待外れに感じることもありますが、条件が合えば非常に扱いやすい技術です。小規模空間で安定した運用を重視する現場に適した選択肢と言えます。
光触媒脱臭装置のおすすめの人・おすすめしない人

✅ おすすめの人
- 小規模空間で環境改善を行いたい
- 安全性を最優先したい
- 管理工数を減らしたい
❌ おすすめしない人
- 即効性を優先したい
- 中〜大規模空間で使用したい
- 汚れが付きやすい環境での使用
光触媒脱臭装置は「誰にでもおすすめできる装置」ではありません。小規模環境を安定して維持改善したい用途には適していますが、中〜大規模空間や汚れが付きやすい環境の場合には他方式が向いています。
自社での使用環境をチェックし、後悔しないようにより最適な装置選定をするようにしましょう。
光触媒脱臭装置のQ&A
Q1. 光触媒脱臭装置は万能ですか?
A. 万能ではありません。「低濃度臭気・小規模施設」の常時対策に向いています。
Q2. 工場用途でも使えますか?
A. 排気処理ではなく、空間や付着臭対策であれば有効です。
Q3. 効果はどれくらいで実感できますか?
A. 数日〜数週間かけて、臭気の戻りにくさとして実感されることが多いです。
Q4. 他の脱臭装置と併用できますか?
A. 可能です。光触媒脱臭装置を基盤対策、他方式をピーク対策として併用するケースが多く見られます。
まとめ:あなたに最適な脱臭・除菌技術は?
光触媒は、光を利用して活性酸素を発生させ、臭気や菌の原因となる有機物を分解する技術です。
即効性や広範囲の処理には限界があるものの、薬品不要で安全性が高く、常時稼働による環境維持に優れています。
施設においては「一気に臭いを消す」用途よりも、「臭気が発生しにくい状態を保つ」基盤対策として力を発揮します。
しかし、機器ごとにメリットとデメリットが存在するため、利用用途によっておすすめの機器は以下のように変化します。
用途別おすすめ技術一覧
光触媒脱臭装置(コスト重視、小規模、メンテナンスフリー、基盤対策)
オゾン(超強力、無人限定、短時間集中ケア)
空気清浄機(物理集塵、ホコリ・花粉対策、フィルタ交換必須)
UV-C(表面・通過菌除菌、照射範囲のみ、直視厳禁)
次亜塩素酸水(スポット除菌、水回り向け、薬剤管理・補充必須)
自社の課題に合った技術選定を
短期改善か長期安定運用か、臭気の性質や発生状況を見極めて、用途に合った技術を選ぶことが重要です。
参考文献・出典
学術論文
- 藤嶋 昭・本多 健一「半導体電極における光電気化学反応」Nature, 1972
- Hoffmann, M. R. et al. “Environmental Applications of Semiconductor Photocatalysis” Chemical Reviews, 1995
- Hashimoto, K., Irie, H., Fujishima, A. “TiO₂ Photocatalysis: A Historical Overview and Future Prospects” Japanese Journal of Applied Physics, 2005
- Watanabe, T. et al. “Photocatalytic Activity and Photoinduced Hydrophilicity of TiO₂” Journal of Photochemistry and Photobiology A
- Nakano, R. et al. “Photocatalytic Inactivation of Influenza Virus by Titanium Dioxide” Journal of Virological Methods, 2012
公的機関資料
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