二硫化メチル

二硫化メチルは、工場・食品加工・下水処理・農畜産など、さまざまな現場で問題になりやすい「特定悪臭物質」です。
特徴的な“強烈な硫黄臭”を持ち、「腐ったキャベツのようなニオイ」「発酵した野菜のような刺激臭」と表現されることが多く、極めて低濃度でも不快臭として感じられるため、周辺住民からの苦情につながる要因にもなります。
このページではそんな二硫化メチルについて、以下のような内容をご紹介していきます。
↓このページで解決できること
「二硫化メチルとは?利用用途や臭気濃度の強さを紹介!」
「二硫化メチルの発生場所やその原因まで解説!」
「二硫化メチルは人体にどのような影響を及ぼすの?」
「二硫化メチルを含む施設・工場の対策事例をご紹介!」
「二硫化メチルの特徴や基本情報の一覧でまとめ!」
上記の順番で、二硫化メチルとはどんな物質なのか、さらには二硫化メチルの臭気対策についても詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
二硫化メチルのニオイの特徴と臭気強度の強さ

参考文献:臭気強度と特定悪臭物質の濃度関係
二硫化メチルは、「腐ったキャベツ」「発酵した野菜」「強い硫黄臭」といった表現で語られる非常に強烈な悪臭成分です。硫黄系ガスの中でも特に不快度が高く、空気中にごく微量存在するだけでもはっきりとニオイを感じてしまうほど感知閾値が0.003と低いのが特徴です。
また、二硫化メチルは揮発性が高く、風に乗って広範囲に拡散しやすいため、排気口から離れた地域でもニオイを感じるケースが多く、周辺住民からの苦情につながることがあります。
実際、全国でも「腐敗臭がする」「どこからか強烈なキャベツ臭が漂ってくる」といった相談が寄せられることが多く、悪臭防止法の特定悪臭物質にも指定されている成分です。
二硫化メチルの発生源や排出施設はどこ?

引用:環境省
二硫化メチルは自然界でも生成される物質ですが、設備・工場・処理施設など、さまざまな人工環境で高濃度になりやすいため、悪臭問題として扱われることが多い成分です。ここでは主要な発生源を解説します。
食品加工・発酵関連施設(野菜加工・漬物・発酵食品など)
野菜や植物性原料を扱う工場では、原料の分解・発酵の過程で二硫化メチルが発生しやすく、特にキャベツ・玉ねぎ・大豆系の加工場では特徴的な腐敗臭として感じられることがあります。
タンク周辺の排気や搬入・仕込みの工程で臭気発生量が増えるケースもあり、温度が上昇すると揮発量が一気に増えるため、夏場に苦情が増える傾向があります。
し尿処理場・下水処理施設
下水に含まれる有機物が分解される際に、メチルメルカプタンなどとともに二硫化メチルも生成されます。
開放槽の周辺では特に濃度が高まりやすく、施設外まで広がることもあります。硫黄系ガスが複合臭として漂うため、「強烈な腐敗臭がする」という声につながるケースも少なくありません。
ゴミ処理場・コンポスト施設
生ごみの分解過程で発生する臭気の中には二硫化メチルが含まれています。特に破砕・攪拌工程では一気に揮発し、ピット周辺に強烈な悪臭が立ち込めることがあります。
対策が不十分だと、施設外の住宅地へも臭気が飛散しやすく、持続的な苦情につながるケースもあります。
農畜産施設(特に家畜糞尿の発酵過程)
家畜の糞尿が分解される際、硫黄化合物が発生しやすい環境では二硫化メチルが検出されることがあります。堆肥舎やピット周辺では臭気がこもりやすく、換気が不十分だと作業者の負担にもつながります。
化学工場・石油化学プラント
化学反応の副生成物として二硫化メチルが発生するケースがあります。排気処理が追いつかないと高濃度で排出されることがあり、強い硫黄臭の原因となります。
このように発生源は幅広く、食品・農業・化学・下水処理など、多くの業種で問題化しやすい物質です。
二硫化メチルが人体へ影響を与える濃度
二硫化メチルは非常に低濃度から強い悪臭として感知される物質ですが、健康影響が出る濃度はそれよりも高いレベルです。
ただし、強烈な刺激臭のため、不快感や身体症状が“ニオイの段階”で現れやすい点が特徴です。短時間であっても、二硫化メチルが漂う環境では「目がしみる」「鼻の奥がツンとする」「のどに刺激を感じる」といった粘膜刺激が発生しやすく、敏感な方では軽い吐き気や頭痛を訴えることがあります。
長時間の曝露や高濃度の場合は、呼吸器への負担が大きくなり、咳や呼吸のしづらさが生じるケースも確認されています。また、二硫化メチルは硫黄系の強い揮発性ガスであるため、密閉された空間では濃度が上がりやすく、作業者の負担が蓄積しやすい点も見逃せません。
特に注意すべきなのは、二硫化メチルを単独で吸入した場合だけでなく、メチルメルカプタンや硫化水素など他の硫黄系ガスと混ざった状態で曝露されるケースです。
複合臭として刺激感が強まり、より不快感が増加し、心理的ストレスも大きくなります。作業現場では濃度の変動が激しい場所もあるため、定期的な臭気測定や作業者の体調チェックが欠かせません。
| 健康有害性 |
区分 |
|---|---|
|
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 |
区分 2A |
|
皮膚感作性 |
区分 1 |
|
生殖細胞変異原性 |
区分 1B |
|
発がん性 |
区分 1A |
|
生殖毒性 |
区分 2 |
|
特定標的臓器毒性 (単回ばく露) |
区分 1 (神経系) |
|
特定標的臓器毒性 (反復ばく露) |
区分 1 (甲状腺, 肝臓, 呼吸器系, 免疫系, 腎臓) |
|
特定標的臓器毒性 (反復ばく露) |
区分 2 (神経系) |
|
水生環境有害性 短期(急性) |
区分 1 |
| 水生環境有害性 長期(慢性)
|
区分 1 |
出典:安全シート
メチルメルカプタンは揮発性が高く空気中に広がりやすいため、密閉空間での使用や保管時には特に注意が必要です。臭気チェックや管理や換気システムの強化など、現場ごとの対策が求められます。
二硫化メチルの臭気対策について
二硫化メチルの臭気対策は、発生源をきちんと管理しつつ、排気を適切に処理するという2つの方向からアプローチすることが欠かせません。
まず重要なのは「どこで二硫化メチルが発生しているのか」を明確に把握することです。食品加工・発酵工程・下水処理・廃棄物処理など、自然発生型の現場では原料の状態や温度・湿度によって発生量が大きく変動するため、工程ごとの発生状況を細かく観察する必要があります。
発生源が分かれば、工程の密閉化、フードの設置、換気量の調整、局所排気の強化などの対策で、臭気の拡散を大きく抑えられます。
次に必要なのは、発生した臭気を「どのように処理するか」という点です。二硫化メチルは硫黄系ガスで反応性が高く、活性炭吸着式や化学吸着フィルター、プラズマ脱臭装置などさまざまな脱臭方式が利用されています。
低濃度環境では活性炭が導入しやすく、継続的・中濃度以上の現場では化学吸着フィルターやプラズマ方式が高い効果を発揮します。
特にプラズマ脱臭装置は、省エネ性が高くランニングコストを抑えながら強い悪臭成分を分解できることから、工場や処理施設など幅広い業種で導入されている方式です。
カルモアでは、臭気の測定・拡散シミュレーション・装置の提案・導入後のサポートまで一貫して提供しており、二硫化メチルのような強い悪臭についても現場の状況に合わせた最適なプランをご提案できます。
二硫化メチルは拡散しやすく、苦情につながりやすい成分であるため、早い段階での調査と対策が最も効果的です。
二硫化メチルの臭気対策事例を紹介

|
脱臭効率
|
|
![]() |
|
![]() |
|
飼料工場様より他社の脱臭装置を導入しているのに臭気苦情が発生しているとのことでご相談を頂きました。
そのため、弊社で計23か所の排気にて対策の優先順位を決めるため、まずは臭気アセスメントを実施しました。
その結果、乾燥排気から臭気苦情に繋がる臭気の大半が発生していることが判明したのですが、他社の脱臭装置は別の排気に導入されていました。
また弊社脱臭装置で乾燥排気に対してデモテストを行った結果、最大99.8%もの脱臭効率と、ほぼ完全に臭気苦情を改善できる数値を出すことができました。
|
\ お気軽にご相談ください / |
|
| 詳細を見る | お問い合わせはこちら |

|
脱臭効率 臭気濃度3,200 → 100 |
|
![]() |
|
![]() |
|
汚泥処理施設様から従業員や来場者に対して不快感のない環境にしたいということでご相談を頂きました。
腐敗臭の原因としては、ダンプから汚泥受入時に瞬時に強烈な臭い(臭気濃度3,200)が室内に充満することが問題となっていました。
しかし局所排気などの設備を設置することはできないため、タイマーを使用することで消臭剤噴霧装置を選定し自動化。
実際の脱臭効率も最大97%(臭気濃度100)と従業員や来場者にとって過ごしやすい環境にすることができました。
|
\ お気軽にご相談ください / |
|
| 詳細を見る | お問い合わせはこちら |

|
脱臭効率
|
|
![]() |
|
![]() |
|
水産飼料工場様は既存のスクラバ―と散水システムでは臭気が取り切れていないことと、装置の大きさに課題を抱えておられました。
そのため展示会の新型プラズマ脱臭装置の事例にて興味を持って頂き、実際にデモテストを行った結果最大97.6%の効果に。
また、装置の大きさも現在の1/10サイズになり、薬液や排水処理にかかるコストもカット。従業員の方の負担も減らせるという結果になりました。
|
\ お気軽にご相談ください / |
|
| 詳細を見る | お問い合わせはこちら |
二硫化メチルのQ&A
ここでは、二硫化メチルに関して寄せられる代表的な質問をまとめました。基本的な性質から対策のポイントまで、ぜひチェックしてみてください
Q1:二硫化メチルのニオイを感じたらすぐに健康被害が出てしまいますか?
二硫化メチルは非常に強い刺激臭のため、ニオイを感じた瞬間に「健康に悪いのでは?」と不安を抱く方が少なくありません。
しかし、低濃度の段階であれば、すぐに深刻な健康被害が出るケースは多くありません。ただし刺激臭が強いため、目や鼻、喉への軽い刺激、頭痛、吐き気などの不快症状が起こりやすく、敏感な方では短時間でも体調に影響が出ることがあります。
Q2:二硫化メチルのニオイを消すにはどうすればいいでしすか?
二硫化メチルは揮発性が高く、強い腐敗臭を持つため、単に窓を開けただけでは完全に解消できないことが多い物質です。
まずは換気が基本ですが、発生源が継続して臭気を出している場合、換気だけでは根本的な解決にはなりません。
工場や施設では、工程そのものを密閉化したり、局所排気を設けることで臭気の広がりを抑えることができます。
Q3:二硫化メチルの臭気はどの程度の距離まで広がりますか?
二硫化メチルは非常に揮発性が高く、空気中での飛散性も強いため、開放空間でも広範囲に広がることが特徴です。
風の方向、気温、湿度、排気口の高さなどの条件によって影響範囲は大きく変わりますが、工場排気が数百メートル先の住宅地まで届き、苦情につながった例も多数報告されています。
また、他の硫黄系ガスと混ざるとニオイの強さが倍増するため、拡散した距離以上に「強いニオイを感じる」ケースが生じやすい点にも注意が必要です
Q4:二硫化メチルのニオイを簡単に数値で確認する方法はありますか?
ニオイの数値化には様々な手法があります。最も精度の高い方法としては、悪臭防止法の規制基準値に採用されている臭気指数測定を行うことですが、測定に際して費用や時間を要します。
より簡単な方法としては、VOCセンサーやニオイセンサーを用いることが挙げられます。VOCセンサーであれば二硫化メチルに対して対象ガスの濃度を測定することが可能です。
ニオイセンサーは対象ガスを複合ガスとして総量として測定を行います。
ニオイという複合ガスに対する測定としてはニオイセンサーがオススメですが、用途や目的に応じて測定方法を選定いただくことが望ましいです。
二硫化メチルのまとめ
二硫化メチルは、極めて低濃度でも強烈な悪臭として感じられる特定悪臭物質で、多くの発酵工程、食品加工、下水処理、廃棄物処理などで自然に発生する物質です。住民からの苦情だけでなく、作業環境にも影響が出るため、「発生源の管理」と「排気処理」の両面からの対策が欠かせません。
カルモアでは、これまでに有機化合物の臭気対策を数多く担当させていただきました。二硫化メチルに対しても、臭気調査をはじめとした効果的な対策を講じることで、安全で快適な環境を維持することが可能です。
もし、二硫化メチルの臭気対策にお悩みでしたら、ぜひ一度当社にご相談いただければと思います。
関連用語

















